デンマークは小さい国だし、今でこそ北海の海底油田で天然ガスを得て利用しているが、地下資源がない国だと思われていた。だから「天然資源」と問われれば、この国では「人」と答えるのが常であるようで、教育に力を入れてきた。
世界で最も早く1814年に、すべての7歳以上の子どもを対象とした義務教育制度を導入している。その後、1864年にドイツとの戦争に敗れ、国土の多くを失った。そこで、デンマーク独特の、農閑期を利用して集まる農家の青年を対象とした全寮制の国民高等学校という教育システムも導入している。
こうした教育システムもさることながら、国民学校法が定める理事会の在り方にも見習うべきところがある。学校の最高執行機関は理事会だが、その構成メンバーが「人」を天然資源と見る国らしい。過半数を保護者が占め、教員を始め学校職員代表が最低2名、生徒代表が最低2名を占める。また、市議会の判断で、地域の企業、中等教育機関、そしてクラブ団体の中から、外部代表2名を加えることができる。要は、学校がどうあるべきかを決める上で、その主人公である生徒を欠いたのでは民主的ではない、との考え方だ。
おのずと審議は、生徒代表がキチンと理解できるように丁寧に進められる。校長はオブザーバーとして参加するが、議題はとことん話し合った上で合意に達するように運ばれており、この審議に20年以上参加してきたが、意見がまとまらず多数決で決めたことは2回しかなかった、と証言している。
こうした考え方が、農業業国のデンマークを、先進国の中で、国民平均所得や幸福度のランキングでいつも高い位置を占めさせてきたのだろう。
このたび澤渡夏代ブランドさんから、同じくデンマークの男性と結婚し、一家を構える小島ブンゴード孝子さんとの共著を贈っていただいたが、目からウロコが続いた。