嬉しい知らせ。月初に3件のメール交換を楽しみ、その合間に3・11甲状腺がん子ども基金の12ペイジもの報告書<a>に眼を通した。これまでの寄付経験で最も確かな手ごたえがあり、得心し、安堵した。何せ、大勢の人の協力を得て捻出できた寄付金であったのだから。
その後、中旬のことだが、中村さんから嬉しい知らせが届いた。北海道の泊原発や東海第二原発の近くでも公演をぶつけたし、来年3月末までに60回公演を記録できそうだ、との手紙が添えられた一著だ。
『線量計が鳴る』の台本が欲しい、との声に応えたという一書だが、これが私とって2つの「予期せぬ得心」に寄与するところとなった。この朗読劇は、まず徳島での公演で初観劇。そこで「京都でも、なんとか」と決意。シネヌーボーの景山さんや滋賀県に住まう今関先生や瞳さんにも手伝ってもらい、同志社大学での公演にこぎつけた。それがキッカケになって滋賀公演が現実「書籍の真価」(一過性の情報ではなく、幾度でも読み直し、検証できる)に触れる思いを体験した。これが最初の「予期せぬ得心」になった、その後、この想いを裏付けるデータを朝日新聞(10/13付け)夕刊で知った。情報入手先メディアと内閣支持率の関係だが、その支持率は、SNSで情報を得ているヒトが最高で48%。次いでインターネットの42%。TVの38%。最低は新聞で、32%。
私の場合は、まずTVで情報を得る。次いで、大事な案件と見ると新聞で確かめ、時には過去の新聞も紐解き、よく吟味して印象を改める。たとえば、首相は就任当時に「李下で冠を整さず」と故事を引き合いにして、潔癖さを堂々とうたった。私は好印象を抱き、期待もしたし、信用もしたくなった。
その後、しばしば怪しげな国会答弁に触れるようになり、新聞をひもといて言動と実際を検証し、各紙にも折に触れて眼を通し、総合判断を下し、印象を改めた。まるで結婚詐欺師のようなやり口だ、と判断。印象を改められたおかげで、やることなすことの裏のココロが見通せるようになり、不誠実さの確証を積積み重ねた。騙され続けたいと願う岩盤支持者のココロも辛いが、国民を欺く稀代のウソつきと分かりながら付いて行くのも辛いことだ。
それはともかく、短絡な情報(ツイッター)とか演説などの一過性情報や、仲良さそうに握手する姿を真受けて判断を下しがちな人が多くなったようだ。あるいは、自分勝手な思い込みがしにくい文字情報が苦手な人は、そうして検証可能な情報をフェイクニュースだと断じてもらって安心したくなるのだろうか。そうした時代の、トランプは落し児だろう。
2度目の予期せぬ得心は、溜まっていたTV録画をまとめて見た30日の夜のこと。『隠されたトラウマ~精神障害兵士8000人の記録~』というNHK番組のおかげで日本兵の実体を知り、得心し、安堵した次第。軍部は、新聞紙面を通して堂々と真っ赤なウソをばらまいていたわけだ。ウソの拡散に協力したメディアの罪は深くて大きい。それはともかく、日本兵も「人の子」だと知った。人命救助で表彰されたことがある農家の息子は、立派な兵士になった。だがその責任感が災いしたようで、強度の精神病を患い、廃人にされたに。
さて、3件のメール。
最初の1件はBBQに参加できなかったリズさんからのもので、アメリカの長女と呼んでいる彼女に素敵な資料をメールに添えてもらえた。
2件目は、NPO)日本ファイバーリサイクル推進協会員の木田理事長からのもので、9/26付け日経新聞の社説「服を捨てないアパレル業に」との提言が添えられていた。当時の(ある審議会委員)仲間に宛てたBCC発信のメールで、悔しい思いがにじんでいた。
木田さんは通産省も巻き込んで「服を捨てないアパレル業界になろう」と呼びかけ、1つの運動を立ち上げ、推進協会を組織した人だ。そして、日本のアパレル業界に向けて実に好ましき目標も掲げ、時を得た提言書をまとめた。
その委員の1人として私も、隠しきれない不安を抱えながら、大いなる期待を述べた。その不安が現実になったことを思い知らすメールだった。だから、返信は自ずと「当時感じていた不安通りになったわけです。日本のアパレル業界にとっては好機到来の時期であっただけに、クヤシイことです」と、共感の意を伝えた。
私の提言は、煎じ詰めると「この好機を逃がさず、日本のアパレル業界がこぞって取り組み『売り上げる(衣料品の)数量や目方は8掛けに減ったが、売上金額は1.2倍に(増え)、ゴミは半減した』となるように努力すべき」だった。ならば、「アパレル業界は世界で冠たる地位を占め得ることになるだろう」と、その最後のチャンスであることを訴えた。
なにせ当時は、主観に支配され勝ちになる美的センスが主ではなく、科学技術力と誠実さ(人と地球への負荷軽減やリサイクル技術の優劣など)を競う時代を迎えていた。だから日本にとってはまたとない好機到来と位置付けるべし、と訴えたわけだ。
事実、その後、帝人と旭化成は世界に先駆け、使用済みポリエステル繊維を原料に戻す技術を開発している。使い古した綿製品をアルコールにかえる技術も誕生させた。当時、もし日本のアパレル業界が、本格的にリサイクル問題に取り組む決断を下していたら、これらの技術は業界にとって、またとない福音、神風のごとき追い風として活かせていたに違いない。だが、現実は、アメリカのパタゴニア社(世界に先駆けて衣料品のリサイクル活動に取り組んだ)アパレル企業が、この技術をイの一番に、本格的に採用しており、日本のアパレル業界は絶好の好機を逸している。
日本の繊維業界は(環境問題や人権問題などがかまびすしくなっていたにもかかわらず)ユニクロにかき回され、「きれいごとで金儲けが出来るか」と言わんばかりの状況に追い込まれていた。だから私は、近視眼的な頑張り方に対して次のような警報も鳴らした。「売り上げる数量は2倍になったが、売上金額は8掛けになり、ゴミは2倍になった」かのごとき業界になりかねない、と。加えて、時は今、環境問題や人権問題などへの配慮を希求している、にもかかわらずその希求に逆行したのでは顰蹙まで買いかねない、と警鐘を鳴らした。このあたりのことは、拙著『次の生き方』に収録した。
だから、木田さんへの返信は、「売り上げ数量は(当時の私の)危惧通りに2倍になったが、売上金額は(当時の)警鐘をさらに下回る7掛け以下になったわけです。ゴミは2倍以上になったのではないでしょうか」と綴らざるを得なった。業界は15兆円市場だったわが国の衣料品市場を10兆円に縮小させたわけだ。
3件目は、社)関西中小企業研究所の土野茂賢専務理事からで、過日の講演がらみの依頼事項だった。機関紙に載せる予定の要約文案が添えられていた。「よくぞここまで」と唸る想いで一読した。例えて言えば、ある男が恋する思いを数分もかけてモゾモゾと訴えた内容が、恋人に聴きとめられ、母親に数秒にまとめて伝えられたような内容になっていた。その意を受けて、次のように添削し、返送したが、これに対する返信は「すばらしいです。気になっていたところがすべて解消されております」だった。
講演、関中研第93回研究会
『「庭宇宙」から見えた未来』の要旨
エコ循環型生活を実践
父から受け継いだ京都嵯峨野にある1,000坪の土地を、半世紀かけて200種1,000本の木も茂るエコライフガーデンと名付けた生活空間を創りました。ここで、45年前から自然循環型生活を実践しています。この森の中で暮らしていると、人間は万物の頂点ではなく、循環の一環にすぎない、と気付かされます。
世界中をビジネスマンとして飛び回り、地球は小さいと気付き、やがて資源枯渇の時代が来る、と確信しました。森つくりや畑つくりが大切になる、との想いを追認したわけです。
より良き地球を未来に引き継ぐ
このような目でいろんな人や企業とつきあい、さまざまな文物を求めて世界中を歩きました。エチオピアで「マーサ」と名付けられた原始人の化石との出会いは1つのエポックでした。私たち現生人類はすべて彼女の末裔であり、5万年ほど前にアフリカを出て今や世界中に散らばって生きているのです。白人や黒人とか国籍とかでいがみ合うなどは虚しいことです。人間さえいなければ地球環境はすぐに元に戻るでしょう。
私たちは地球人としてもっと心豊かな生き方を追求し、未来がほほ笑みかけて来るような人生にしたいものです。これまでの私達は、採って作って使って捨てる、と言ったような「欲望の解放」を繰り返し、「願望の未来」を追っていました。これが破綻の元凶であり、いまやその兆候が露わになりつつあるのです。これからは「必然の未来」を見据え、「生き方」を改め、未来世代に引き継ぎたいものです。実は、「人間の解放」に誘う生き方があります。ここれまでとは違う豊かさや美しさに気付かせてくれることを実感しています。
ちなみに、その後、要約文を次号機関紙に載せるので、とその文案が届き、慎重に添削し、中国旅行出発直前に返送した。随分時をかけたが、理由は2つ。まず、仕事上の3人の恩人に触れた部分が含まれていたが、これまで文字にしたことがなかったこと。加えて、この講演は、収入のための仕事ではなく、仕事に人生観に育んでもらったような生き方の紹介になり、これも初めての試みであったこと。しかも、その内容を、私にとっては1000分の1に要約することを求められたからだ。
講演はパワーポイントを活用したので、図の活用×色彩の活用×90分の語りだったが、それを文字だけで、しかも文字数に換算して10分に1に要約することを求められた。つまり、情報量にすれば 10分の1×10分の1×10分の1=1000分の1というわけだ。
その後のこと、中村さんから連絡があり、NHKがドキュメント番組として公演活動を追っていたが、放映時間(本放送11/4 5:00~6:00「心の時代」、11/10 13:00~14:00再放送)を知った。出版と相まって、とても目出度い。